旅ローカル余白
鈍行列車でゆく、週末のスロー旅
田中 佳一🗓 2024年9月7日
移動を急がないと、景色が会話になる。風の匂いが変わるたび、気分もすこしずつゆるむ。
週末のローカル線は、思ったより混んでいない。指定席もないから、好きな場所に腰かけ、窓の開く席を選ぶ。海沿いに出れば、潮の匂いが車内に流れ込んでくる。
持ち物は少なめに。文庫本、ペットボトルに入れた麦茶、小さなバターサンド。手をふさがない荷物だと、途中下車のハードルも下がる。
駅に着いたら、地元の商店街を歩く。観光地ではなく、日常が続く場所で手土産を探す。旅の記憶は、帰宅後に使えるものに宿る。
夜は安い宿で十分。部屋の明るさと寝具の清潔さだけ確認する。眠る前に今日のメモを読み返し、翌朝に行きたい喫茶店を調べる。少しの計画と、大きな余白がちょうどいい。